ローカライズに成功した企業5社

グローバル展開を望む企業であればローカライズとグローバリゼーションが密接に関係していることを知っているでしょう。コカ・コーラやWWF、Airbnb、任天堂などの大手小売企業たちは、サービスを展開する国の文化や慣習と関連するものを構築することが事業拡大に欠かせないことを理解しています。

マーケティング担当者は個人の経験や地域の文化が消費者の購買プロセスに深く影響を及ぼすことを認識する必要があります。商品やサービスがある程度身近に感じられなければターゲットにしている消費者はすぐに競合に乗り換えてしまうでしょう。

競争の激しい国際的な市場だからこそ、弊社では各ブランドに商品やサービスを差別化するためのさまざまな画期的な方法を考えるよう働きかけています。

現代におけるローカライズのすばらしい成功例5社について紹介する前に、ローカライズとは何か、そしてグローバルブランドがローカライズに引きつけられる主な理由について説明しましょう。

ローカライズとは

ローカライズとは、企業がコンテンツや商品、サービスを特定の地域の市場に適合させることです。

商品やサービスを展開している市場やその地域の文化に関する具体的かつ適切なデータを収集することでローカライズ戦略を実施できます。それらのデータをもとにしてレポートや今後の予測、資料を作成します。

ビジネスにとってローカライズが重要である理由についてはこれからご説明します。

ローカライズを取り入れる理由

市場の変化に対応しつつも一歩先を行くためにはターゲットオーディエンスとの効果的なコミュニケーションと関係性の構築が必要です。そこでローカライズ戦略が登場します。

ローカライズでビジネス戦略を強化する理由には下記があります。

  • ブランドの参入障壁の軽減
  • カスタマイズされた顧客体験の実現
  • 異文化への敬意の醸成
  • ブランドの認知度向上
  • 収益増加

また、ローカライズを成功させるための秘訣は下記のとおりです。

  • 存在感を確立しようとしている地域に合わせた商品づくり
  • 地域特有のニーズへの対応
  • ターゲット地域のオーディエンスに合わせたローカライズ戦略の実施

ローカライズの成功例5社

一般的に、ローカライズは幅広い概念で捉えられておりローカライズ戦術の実施方法は企業や分野、地域、事業規模によって変わります。

ここでは全世界の企業の中から適切にローカライズを実施したと思われる企業をいくつか例としてご紹介します。

Airbnb

まずはAirbnbからご紹介します。2008年に創業したこのホスピタリティ業界の巨頭は業界を大きく揺るがすことに成功しました。同社はローンチ後瞬く間に220か国以上に展開しました。

成功の裏に隠された秘訣

あらゆるユーザーとの接点においてパーソナルな印象を与えること。

Airbnbの創業者たちは、人々が慣れ親しんだ場所で寛ぐことを好むと同時に新しい土地でワクワクするという点に目をつけました。それは旅行業界では最高の組み合わせであり、成功の秘訣でもありました。

Airbnbのローカライズの方法

まず、同社のウェブサイトとアプリは62か国語で利用できます。これはローカライズマーケティングのステップの1つですがそれだけにとどまらず、同社は必要に応じて、それぞれの地域向けにコンシェルジェのような役割をするローカライズしたガイドを提供しています。

Airbnbが採用したもう1つの素晴らしい戦術はサインアップ方法についてのローカライズ

アメリカではAirbnbユーザーは既に持っているFacebookやGoogleアカウント経由でAirbnbのアカウントを作る傾向があります。しかしこれらのプラットフォームは世界のどこにおいても好んで使用されているわけではありません。

中国でのローカライズを成功させるために同社はWeiboやWeChatなどのプラットフォームのログイン認証を使用してアカウントを作ることができるようにしました。その結果中国における市場が700%近く拡大しました。

Apple

次のローカライズ成功例はAppleです。スティーブ・ジョブズによる比類なきマーケティング戦略によってAppleは今日の地位を築きました。スマートでオシャレ、そして高価でありつつも洗練されたデバイスを一部の消費者に向けて限定的に提供するブランドとしての地位を確立しました。

しかしジョブズはこれらの戦術が欧米で成功しても、東洋の国々では実を結ばないことに気づいていました。特に日本などの国では他者を下に見ることは文化的に好まれない行為であり、これは企業間でも存在するタブーです。

そのため、これまでアメリカで展開していたマイクロソフト社を叩くような戦術の代わりに現地のコメディアン二人を採用し、Windowsはフォーマル向けでMacは遊び心のある人向けという広告を展開しました。

さらにAppleはこの一手で現地の文化に合わせたマーケティング戦術に切り替えただけではなく、現地の著名なコメディアンを採用したことでターゲットオーディエンスとの関係性構築にも成功しました。

Appleの日本市場の規模が推定285億ドルというのもうなずけます。

世界自然保護基金(WWF)

世界でもっとも広く知られているNGOの1つであるWWFがローカライズマーケティングのプロであることはまったく驚くことではありません。WWFのブランド資産を見ると、活動内容だけではなくローカライズが啓蒙にどのようなメリットをもたらすかを知ることができます。

WWFはデジタルフットプリント(インターネットを利用したときに残る記録の総称)に大きく依存して世界中のターゲット市場にリーチしているためコンテンツを翻訳し、そして適切なコンテンツを適切なユーザーに届けることの重要性を理解しています。

しかしローカライズとは単なる翻訳ではありません。ターゲット市場の共感を得られるようにコンテンツの丁寧な磨き上げ、そして適切な文脈への適合作業も含まれます。

そのため、WWFの各国向けウェブサイト(アメリカ、ナイジェリア、中国など)では特定の地域とオーディエンスに関連性のあるコンテンツが特集されており、こうすることによりオーディエンスにとってもっとも重要なコンテンツを提供することができています。

ケンタッキーフライドチキン(KFC)

世界中で展開しているフライドチキンのファストフードチェーンであるKFCはアメリカのケンタッキー州に本部がありますが、数千キロも離れた中国でもっとも売上を上げています。中国市場への参入でキーになったのは中国現地の味付けに合わせたことです。

1987年にKFCが中国に出店した時、中国人の経営者たちはアメリカで成功していたビジネスモデルを中国では取り入れないことにしました。アメリカの投資家が利益率を上げるためにより多くの商品を展開するよう要求しても中国ではこの戦略は取り入れられませんでした。

中国人の経営者たちは中国の消費者が何よりも味と品質を重視することを知っていたのでアメリカと同じメニューを提供するのではなく、中国料理で広く愛されている味付けを取り入れることにしました。

このようなローカライズ戦略によってKFCは中国で大きな成功を収めることができました。

コカ・コーラ

2013年にコカ・コーラは世界中の人々を虜にした“Share a Coke”という大人気キャンペーンを展開しました。ボトルにはコカ・コーラのロゴの代わりに“Share a Coke with John”のように名前を表示させるようにしたのです。これはジョンという名前だけではなく、ブリトニーやボビー、スティーブなどあらゆる名前の人に向けて作られました。

コーラのボトルに自分の名前が記載されているという不思議な感覚はあるものの、人々は自分の名前が見つかるかもしれないという盛り上がりをみせていました。

このキャンペーンはアメリカで人気でしたが、コカ・コーラは他の地域向けにラベルをローカライズしました。たとえばアイルランドではオルセンやイーファという名前を追加しました。しかしそれ以上に同社のローカライズ戦略で先進的だったのはアジアの国々での取り組み方でした。

中国では他者を下の名前で呼ぶことは軽蔑的に捉えられるので、通常敬称を付けて姓で呼びます。ではコカ・コーラはどのようにしてこのキャンペーンを実施したのでしょうか。

コカ・コーラは下の名前をラベルに使うのではなく、親友やクラスメイトという単語を使おうと考えました。これはマーケティングキャンペーンの本来の意図を守りつつ文化の壁を乗り越える素晴らしい方法でした。

ローカライズの成功例:まとめ

グローバリゼーションはどの企業にとっても最終的なステップになりますが、 必要なローカライズを伴わないグローバリゼーションはブランドの評判に甚大な影響を与える可能性があることを認識しておく必要があります。

進出を計画している国の文化的・社会的な背景を正しく理解できていなければ無神経な広告を展開してしまうリスクがあり、これはどんなビジネスにとっても決して良い兆候とは言えません。商品やサービスのボイコットにつながる大きな反発を招くこともあり得るのです。

そのような事態に陥らないためにも、今回のブログでご紹介したAirbnbやコカ・コーラ、Apple、そしてKFCのようなローカライズの巨頭たちが経たプロセスや戦術をしっかりと研究しましょう。

しかし、ローカライズへの取り組みにおいては現実的な思考を持つことも重要です。グローバルキャンペーンに数百万ドルも費やした結果、ローカライズしたコンテンツが単なる翻訳であり滑稽な内容や不快感を与えるような内容で世界中で笑いものになるということもよく起こっています。

まずはターゲットの市場をよく知ることが重要です。もしくは市場を理解している人を見つけましょう。

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