ブランドにとって最適なEC価格戦略とは?
ECにおいて、ブランドに適した価格戦略を見極めることはビジネスを行う上で最も困難なことの一つです。価格が高すぎるとターゲット市場から追い出されてしまう可能性があり、逆に安すぎるとビジネスの収支を合わせるのに苦労することになるかもしれません。
ECの価格戦略に完璧なものはなく、諸刃の剣のようにそれぞれ良い面も悪い面も持ち合わせます。ひとつ例を挙げると、価格は自由に設定できます。しかし残念なことにブランドやターゲット層にとって適切でない価格を選択をしてしまう可能性があります。
市場や目標に応じたECのさまざまな価格戦略のメリットとデメリットについて知識を付ける必要があります。本記事で探ってみましょう。
ECの価格戦略に影響を与える最大の要因
ターゲットとする市場や商品、生産コスト、そして競合他社は価格戦略に影響を与える最も重要な要素となります。
なお、価格戦略は後で変更不可能なものではありません。市場の影響や、時期、サプライチェーンの問題、特定のキャンペーンの目標によってROIを最大化するために価格戦略の見直しが必要になることがあります。
要するに柔軟性を持ち、どんな状況にも対応できるようにならなければいけません。そしてブランドに適切な価格戦略の策定と見極めを始める際には、ターゲットとする市場とそのニーズに応えることが最優先されるべきです。
ECの価格戦略を明確にするために以下の質問について整理してみましょう。
- ターゲットとする顧客は誰か。
- 彼らが貴社のブランドに対して期待を寄せていることは何か。
- 貴社商品の知覚価値とは。
- 競合他社はどのような価格設定をしているのか。
- 製造費や諸経費はいくらかかっているか。
- 配送料や手数料はいくらかかっているか。
- 想定される利益率はいくらか。
- セールスやプロモーションは収益にどのような影響を与えるのか。
選択した価格戦略は固定されたルールではないことを覚えておきましょう。市場やブランドの進化に合わせ、目的に応じて価格を見直したり調整したりする必要があります。
実践するためECブランドにおけるトップの価格戦略について見ていきましょう。
#1. コストプラスプライシング
コストプラスプライシング(Cost-plus pricing)は、ECブランドにとってかなりシンプルな価格設定戦略です。商品の仕入れ原価にマークアップ、つまり上乗せを行って消費者に提示したい価格を算出します。
通常、マークアップは商品の製造や保管、および出荷のコストに対する一定の割合で行います。マークアップはビジネスを行うためのコスト(諸経費や人件費等)をカバーし、利益を生み出すことを目的としています。
メリット
コストプラスプライシングの最大のメリットは、比較的シンプルで理解しやすいことです。商品やサービスの原価にマークアップを加えることで、企業は利益を確保するために必要な販売価格を迅速かつ容易に決定することができます。
さらに、コストプラスプライシングは素早く十分な情報に基づいて価格決定を行うことができるためペースの速い市場や競争の激しい市場において非常に有効です。
コストプラスプライシングのもう一つのメリットは、ほとんどの場合透明性が高いということです。
商品の原価にマークアップを加えるので、最終的な価格にどのように到達したかを関係者(または顧客)に明確に伝えることができます。これにより、価格が公正かつ妥当かどうかを誰もが確認できるため信頼と信用を築くことができるのです。
しかしECビジネスにコストプラスプライシングを使用する場合、考慮すべきデメリットがいくつかあります。
デメリット
コストプラスプライシング戦略は市場の需要には影響しません。また、コストプラスプライシングを採用している企業は、顧客が喜んで支払うであろう金額を考慮していません。その結果、商品に企業が希望するほどの価格を課すことができていない価格設定をしているかもしれません。これは売上の損失や利益の減少につながる可能性があります。
そして、コストプラスプライシングのもう一つの欠点は、競争要因を考慮しないことです。そのため、市場から排除される価格設定になる危険性があります。
また、コストプラスプライシング戦略では大量注文に対する値引きである数量割引や、大量生産による生産コストの節減など、収益性に影響を与える要因の影響を考慮しません。そのため、低価格設定が可能であったにも関わらず、長期的に高価格設定をしまうというリスクを負う可能性があります。
#2. 競争価格設定
競争価格設定戦略では、競合他社が提供している同様の商品やサービスのコストに基づいて価格を設定することになります。
メリット
- マーケットシェアの拡大 — マーケットシェアを拡大し、より多くの顧客を獲得するためのより良いポジションを確保することができます。
- 売上の増加 — 競合他社に負けない価格を設定すればより早く販売量を増やすことができます。
- 顧客ロイヤリティ — 競合他社よりも低価格で同一または類似の商品やサービスを提供していると顧客が認識すれば、顧客により選択されやすくなる可能性があります。
- コスト削減 — 顧客獲得単価が下がり、販売量も増えるでしょう。
次はデメリットを見てみましょう。
デメリット
- 利益率の低下 — 競合他社の価格に合わせようとすると利益率の低下を受け入れなければならないかもしれません。
- 価格競争のリスク — 競合他社も互いに価格を合わせようとすれば価格競争になりかねません。
- 差別化力の低下 — 低価格にこだわり続けるとブランドの差別化が難しくなります。
- 価格決定力の制限 — 競争価格設定戦略はたとえコストが上昇しても、価格の引き上げに制限がかかる可能性があります。
競争価格設定だけが競争の手段ではないことを心に留めておいてください。より良い品質や、より良いサービス、より良い顧客体験を提供することは、売上を伸ばし顧客ロイヤリティを高め、競合が多い市場での差別化を可能にします。
#3. バリューベースプライシング
バリューベースプライシング(Value-based pricing)とは、商品やサービスの価格を知覚価値、つまり消費者が商品に対して感じる価値に基づいて設定する価格戦略です。
メリット
- 商品の価格と顧客が感じる価値を一致させることで、お客様に適正な取引をしていると感じてもらうことができます。
- 商品やサービスの知覚価値を高め、売上の増加や利益率の向上につながります。
- その商品が持つ独自の価値を強調することで、競合他社と差別化できます。
- 顧客は、自分のお金に見合う価値を得たと思えば、再び利用する可能性が高くなるため忠実な顧客ベースを作ることができます。
デメリット
- 商品の知覚価値を判断することは難しく、適切な価格を設定することは困難です。
- ターゲットとなる顧客に商品の価値を伝えるのは容易ではなく、価格の正当性を主張することは難しいです。
- 顧客は商品の知覚価値に対して、より高い価格を支払うことを避けたいと考えるであろうことから、バリューベースプライシングはよりリスクの高い戦略の一つです。
- 商品の実際の価値は測りにくいため、価格が適正かどうかがわかりにくい場合があります。
さらに、商品の差別化が進んでいない企業では、バリューベースプライシング戦略を採用することができない場合もあるため、実行に移す前にその点を留意しておきましょう。
#4. サイコロジカルプライシング
知覚価格とも呼ばれるサイコロジカルプライシング(Psychological pricing)は、例えば端数価格(例えば、10ドルではなく9.99ドル)を使用することや、期間限定の割引を提供するといったような消費者の考え方や行動を利用した心理的な戦術です。
この価格戦略では、FOMO(取り残されることへの不安を感じさせること)、や希少性、まとめ買い割引、緊急性などの戦術を使って、消費者の行動に働きかけ販売量を増やすことになります。
最終的に望ましい感情的な反応に合わせて、商品の価格を調整します。
メリット
- 知覚価値の向上 — FOMOのような心理作戦を用いることで企業は顧客に、商品が苦労して手に入れたお金に見合った価値があることを認識させることができます。
- 売上高の増加 — 端数の価格設定や期間限定販売などの戦略は顧客の購買意欲を高め、短期間での売上増につながります。
- 利益率の向上 —顧客の特定の感情的な反応を引き起こすように価格を調整すると、商品の価格を高くしてコンバージョンを増やすことができます。
デメリット
- 騙されているように認識される — 顧客の中には、騙されたと感じ企業に対する信頼を失う方もいるかもしれません。
- すべての商品に適用できるわけではない — 商品によってはサイコロジカルプライシング戦略に適さない場合があります。
- 導入の難易度が高い —サイコロジカルプライシング戦略の導入は消費者の心理や行動をよく理解する必要があり、複雑なプロセスになることが多いです。
この価格戦略は特定の期間限定キャンペーンで使用するのが最適です。また、サイコロジカルプライシング戦略は倫理的に使用することが重要となります。
#5. ダイナミックプライシング
ダイナミックプライシング(Dynamic pricing)とは、需要と供給や競争、顧客の行動、休日のセールイベント、さらには天候など、さまざまな要因に基づいて価格を常に調整する価格戦略です。
メリット
- 収益性の向上 —需要に応じてリアルタイムに価格を調整するため、需要の高い商品には価格を高く、そうでない商品には価格を低く設定することで収益と利益を上げることができます。
- 競争力の向上 — ダイナミックプライシングはECブランドが競合の価格に合わせたり打ち負かすことで、競争力を維持するのに役立ちます。
- 顧客体験の向上 — 購入履歴や閲覧行動に基づいて、個々の顧客にパーソナライズされた価格を提供することでより魅力的なショッピング体験を提供します。
デメリット
- 価格差別 — 顧客ごとに異なる価格を設定すると、ブランドが価格差別で非難される危険性があります。これはデリケートな問題でありブランドの評判を損なう可能性があります。
- 複雑さとコスト — ダイナミックプライシング戦略の導入はこのリストの中でもより複雑でコストのかかる戦略の一つであり、高度なテクノロジーとデータ分析が必要です。
- 顧客からの信頼の低下 — 常に価格を調整することで一部の顧客は自分が利用されていると感じ、ブランドに対する信頼や長期的なロイヤリティが低下する可能性があります。
- 法的規制 — 規制によっては、ダイナミックプライシングの使用が禁止または制限される場合があります。特定の地域や国でこの戦略を実施したい場合は法律の専門家に確認することが不可欠です。
ダイナミックプライシングはECに効果的です。しかし、収益性と顧客満足度の適切なバランスをとることが重要となります。
あなたのブランドにとって最適なECの価格戦略とは?
最終的には、自分のビジネスにとって最適な価格戦略を決定するために実験を行う必要があります。ターゲットとする市場や生産コスト、そして市場での競合を考慮しなければいけません。
まず、価格設定の実験を行い、商品やサービスの価格を変えながら売上やコンバージョン率、顧客満足度への影響をモニタリングすることから始めるのが良いでしょう。
また、商品やセグメントによって戦略を使い分けることで収益と利益を最適化することができます。
あるいは、専門家に聞いて時間を節約することもできます。
今すぐLingbleのチームに連絡し、無料相談を受けてみましょう。